Jul 05, 2010
鉛筆の芯が接続されて汚れています
私が小学校4年生の時だったと思います。ある日、誤って手に鉛筆の芯を刺してしまいました。そのまま放置しておくと、鉛筆の芯が心に刺さった死んでしまうかもしれないと思ったのですが、痛かったので、傷が完治されるまで待つことにしました。そのまま放ってしまったところ、鉛筆の芯が打ち込まれたのは、斑点になってしまいました。今もその汚れは残っています。南の海への旅行を行くようになっ年甲斐なく、肌を小麦色に焼くことが多くなりました。白いのよりも洗練さが引き立つような気がします。しかし、最近、なんとなく点が増えたような気もして、実はちょっと気になっています。前のサーファーの友人が突然腰に点があり、気になって病院に行ったところ、皮膚癌と診断したことがありました。幸いにも悪性ではないので、切除するだけで終わったのですが、ちょっと怖いですね。
電子書籍事業を手がける企業/団体は、オープンなフォーマットが主流になってしまう前にユーザーを囲い込み、出版社を巻き込んで“エコシステム”を確立させたいのが本音だろう。しかしその方針は、はたして読者/ユーザーのメリットとなるのだろうか…。
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オープンなXMDFと
クローズドなXMDF
シャープやソニーが記述フォーマットとして採用したXMDFは、日本語固有の組版ルールをとりあえず最低限盛り込んだものではあるが、すでに国際標準になっている。それにもかかわらず、その評判は必ずしもよいとはかぎらない。
海外でXMDFの採用が進まない――外資系企業がXMDFに乗ってこない――最大の理由は、XMDFが日本語を扱うための記述フォーマットと捉えられているからだろう。
もちろんXMDFで英文を扱うことはできる。しかし例えば中国語やアラビア語など、他の言語への配慮はあるのだろうか。つまり世界標準とするには、仕様的に十分ではないと考えられている。英語以外の言語の組版に対応するのであれば、世界中の言語に1つでも多く対応できたほうがよい。
国内でXMDFに対して批判的な声が多いポイントの1つは、「XMDFがクローズドである」ことだ。世界標準(IEC 62448)を「クローズ」と批判することは変な気がするが、IEC 62448で公開されているのは、XML言語の仕様にあたる記述フォーマットである。ただし、それをバイナリに変換した実行フォーマット、さらにはメタデータやDRMを付加した配布フォーマットへの変換については、仕様が公開されていない。つまり、だれもがシャープのGALAPAGOS用の配布フォーマット(配布ファイル)を作成できるわけではないのだ。
配布フォーマットの作成までをXMDFと捉えるなら、XMDFは必ずしもオープンな標準とは言えないことになる。言い替えれば、「記述フォーマットとしてのXMDFがオープンであっても、ソリューションとしてのXMDFはオープンではない」ということになる。
仕様が公開されていないということは、「配布フォーマットを作成するのに特定のオーサリング・ツールを利用しなければならない」ことを意味する。そして、このようなツールはしばしば高価だ。もちろん「仕様が公開されたDRMは存在できるのか」という議論もあるが、DRMを除いた部分だけでも公開されれば、フリーのオーサリング・ツールが登場する可能性が増すことはまちがいない。
XMDFの提唱者であるシャープが、この問題をどのように考えているのか。仕様をクローズドにし、それを限定的に公開することで利益を得たいと考えているかどうかは、筆者にはわからない。しかし、シャープが電子書籍事業をコンテンツ制作から書籍の配信、端末の販売まで含めた“トータルソリューション”と捉えていることから考えれば、おそらくそのつもりなのだろう。民間企業であるシャープの事業である以上、その方針自体は非難されることではない。
また、このような専用ツールが必須であるフォーマットには、参入する出版社にもメリットがある。専用の高価なオーサリング・ツールを購入しなければならない代わりに、そのフォーマットには個人が簡単に参入することはできない。昨今、同人誌の即売会が大きなビジネスになりつつあることを考えれば、同じことが電子出版で起こることを警戒する出版社があっても不思議ではないだろう。
こうした動きは、書籍の電子化により、出版社と個人、あるいは一般出版物と自費出版物の垣根がなくなること――同様のことがすでに音楽では起こっている――を期待している人たちにとっては、障害としか考えられないことであろう。
小説をはじめとする文芸書のようなオンリーワンのコンテンツはともかく、ハウツー本などの実用書では、同じテーマの異なるコンテンツが多数存在している。こうした本を電子書籍で出版する時に、出版社によるDRM付きの、しかもビュワーが限定された使いにくい有料のコンテンツと、DRMのない自由に利用可能な自費出版のコンテンツが同じ土俵の上で戦えばどうなるか。どんなに出版社が「歴史と実績のある出版社による、質の高いコンテンツ」と喧伝したとしても、DRMのない自由なコンテンツに勝つことは難しい。むしろ、出版社が頑張れば頑張るほど、編集コストが上昇するという側面もある。
電子書籍の配布フォーマットをクローズドにしておく裏側には、DRMによる単純な不法コピー防止という意味に加え、出版社による刊行物と自費出版で、市場に線引きをしておきたいという意向もあるだろう。
オープン/クローズドの議論よりも
大切なことは何かを見極める
だが、それでも完全にオープンで(DRMは別にして)、日本語を含む各国語をサポート可能な電子書籍フォーマットの標準はやってくる。現在、それを目指して規格化作業が進められているものがある。「EPUB 3.0」だ。
IDPF(International Digital Publishing Forum)が定めるEPUBは、XHTMLをベースにした記述フォーマットをベースに、CSSによるレイアウト記述やXMLによる書誌情報(メタデータ)を組合せ、ZIPによる1ファイル化/バイナリ化を行うものである。
HTML 1.1とCSS2をベースにする現行のEPUB 2.01は、日本語の組版に対応できず、縦書きやルビ、縦中横といった表現をサポートできない。しかし、HTML 5やCSS3の機能を取り込むことで、日本語を含む各国語対応を行ったEPUB 3.0が、2011年5月を目標に規格化作業が進められている。遅くとも2012年には、このEPUB 3.0の実装が実現すると考えられる。
EPUB 3.0が成立し、現在EPUB 2.0xをサポートした陣営――Apple/iBooks、米国ソニー/Reader、Barnes&Noble Nook――がこの新規格に移行すると、これらが提供するビュワーや端末は、ファームウェア的には全世界の様々な言語で利用可能となる。
もちろん、現実に端末を全世界で流通させるには、フォントの問題もクリアしなければならない。しかし多言語フォントを搭載し、全世界でほぼ同じ仕様のiPadが販売されていることや、米国で売られている第3世代のKindleに日本語フォントが搭載済みであることなどを考えれば、決して乗り越えられない壁ではない。
つまり、EPUB 3.0が実装されるタイミングは、黒船が来襲する可能性の高まるタイミングでもある。それまでに国内の電子書籍市場を確立し、一定上のシェアを確保しておきたいというのが、電子書籍事業が急にブームとなっている背景ではないだろうか。
ただし、EPUB 3.0が実装されたからといって、すべての電子書籍端末で同じコンテンツが共通して利用可能になるわけではない。EPUB規格にはDRMは含まれていないから、電子書籍事業者によって採用するDRMが異なれば、DRMの付与されたコンテンツを相互利用することはできない。
それでも、DRMのないコンテンツに関しては共通利用可能になる。オープンな標準が確立されることで、フリーのオーサリングツールが登場する可能性も高まる。EPUB 3.0が注目を集める理由は、こうした背景があるからだろう。
とはいえ、一般消費者は規格のオープン性をどのくらい意識しているのだろうか。電子書籍の世界で最も高いシェアを持つ米国Amazon.comのKindleがDRM付きの独自フォーマットであること、音楽配信で圧倒的なシェアを持つAppleのiTunesが、ある時期までDRM付きが主流であったこと(わが国のコンテンツではいまだにそうだが)などを考えると、一般消費者にとって規格がオープンかクローズドかという点は、大した問題ではないのではないだろうか。
* * *
最も肝心なことは優良なコンテンツを、消費者が利用しやすい形で提供できるか、ということである。特に後者の点において、オープンであることは有利に働くと思われるが、KindleやiTunesの成功は、クローズドでも勝機があることを示している。しかし、そのためには消費者に向き合って、消費者が何を求めているのか真剣に考える必要がある。わが国の電子書籍事業に決定的に欠けているのは、この姿勢ではないかと思う。
(元麻布春男)
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